風姿花伝に学ぶ新人教育

桜の季節がやって来ました。あと一週間もすれば、職場、学校に新しい血がやって来ることになります。とはいえ、これも、九月入学が大勢を占めるようになれば変わるのでしょうが。

さて、新人には、教育を施さなければなりません。新人教育といって思い出されるのは、世阿弥による能楽書「風姿花伝」の第一章「年来稽古条々」です。

ご存知の通り、この本は父・観阿弥と共に能を成立させた世阿弥による芸能論です。この本は能の演者のための網羅的な教科書になっており、そのうちの一章が若者の育成方法、能の演者のキャリアに割かれています。教育に関する主張は世に浜の真砂の如く存在するでしょうが、私はこの本が一番記憶に残っています。

週末に読み直したので、重要と思われるポイントを意訳しつつ抽出してみます:

  • 最初のうちは好き勝手にやらせろ。細かい指示を出すな。細々と指示を出すと初心者はやる気をなくす。初心者がやる気をなくすと後継者がいなくなってその分野が途絶える。
  • 初心者には初心者なりの、それまでに身に付いた良さがあるので、それを活かすようにしろ。
  • 基本的なことだけ教えろ。いきなり大舞台に立たせるな。

実に単純、明快ですね。風姿花伝では能の稽古は七歳より開始されることになっており、稽古が始まった頃に教える側が考慮すべき点をまとめると、上のようになります。新人の教育にあたっては、あまり気負いすぎず、最初はこの程度のことを気に留めておけばいいのではないかと思います。